むかし、ある夫婦に、子どものねがいかなわず、毎日神社へおまいりしていました。ある日、あまりに小さいおとこのこが生まれます。指の大きさほどです。 「いっすんぼうし……一寸法師だね。」
いっすんぼうしは小さいけれど、心は大きいです。ある日、針の刀と、お椀の船、箸の櫂を持って言います。 「みやこへ行って、りっぱな人になります。ちいさいけど、つよい心があります。」
川をお椀に乗って下ります。波がちいさな船を揺らします。みやこに着くと、大きな家に拾われ、姫に仕えます。家の人は最初おどろきますが、いっすんぼうしは真面目で、みんなに好かれます。
ある日、おにがあらわれ、姫を連れていこうとします。いっすんぼうしは針の刀をふり、おにの目に飛び込みます。鬼は「いたい!」とさけび、打ち出の小槌を落として逃げます。
姫は小槌を振ります。 「いっすんぼうしが、おおきくなれ!」
煙とともに、いっすんぼうしは普通の青年の背丈になります。家中が喜びます。都の空は広く、祭りのような声がします。
その夜、新しい背丈の青年は、昔の小さなお椀を手に取ります。もう乗れません。でも川の音は聞こえます。遠い村の父母のことを思います。物語は、小さかった旅人のままでは終わらず、大きくなった足で、また朝の都を歩くところから、静かに次の日が始まります。
たいようがゆっくりしずみます。みちにはあしおと、ドアのおと、いぬのこえ。だれもはしりません。むらはふつうのりずむです。
しばらくしずかです。とおくでだれかがなまえをよびます。くるまいしのみちをとおりすぎます。パンとぬれたつちのにおいがします。
Want more stories?
「だいじょうぶ?」となりのひとがまどからききます。 「だいじょうぶ。」したのひとがこたえます。「ただ、ながい一日だった。」
いえのなかのあかりはちいさくて、きいろいです。いすとテーブルと、みずのつぼがあります。だれかがみずをそそぎます。だれかがすわります。だれかがドアをいちびょうみて、まただれかがくるのをまつみたいです。
そらはくらくなります。さいしょのほしがでます。かぜがえだをゆらします。ねこがにわをゆっくりあるきます。よるもいそぎません。
ねるまえに、きょうのことをちいさいこえでもういちどはなします。みち、こわさ、わらい、いえへのかえり。ながいはなしはいりません。いえにいて、テーブルがととのっていて、まどがしまっている。それでたります。あしたむらはまためをさます。このはなしは、あかりのそばできいたむかしばなしのように、こころにのこります。
よくあさ、むらはまたふつうのおとにめをさます。ドアがあき、みずくみ、こどものなまえをよぶこえ。ぼうけんをしたひとはすこしつかれていますが、こころはかるいです。
いちばで、だれかがはなしのかけらをはなします。くわしいところはみんなすこしちがいます。いえ、なまえ、うみ、やま、ちいさいふね。それでもだいじょうぶ。いきているはなしは、くちからくちへとうるうちに、すこしだけかたちをかえます。
ひるすぎ、みちはにぎやかです。たいようがたかいです。くだものをかい、あいさつし、ふくろをさげてかえります。きのうのこわさは、ひるのひかりのなかでちいさくみえます。でも、ふしぎなきもちは、ポケットのいしのように残ります。
ごごはやすむじかんです。かげのいす。コップのみず。こどもがききます。「それから?」おとなはわらって、ゆっくりこたえます。いそぎません。ほんとうのおわりは、こうです。またここにいること。いっしょにいること。てが自由で、いえにかぜがは入れること。
Comprehension Quiz
いっすんぼうしはどのくらい小さいですか?
いっすんぼうしは何を船にしますか?
おにが落としたものは何ですか?
姫が小槌を振ると、いっすんぼうしはどうなりますか?
Japanese Study Tools
Choose a study mode
