むかし、たけとりのおじいさんが、山でたけを切っていました。一本のたけが、へんに光っています。 「おや?」
たけを割ると、中に、とても小さな女の子がいます。手のひらより小さいです。ひかりがやわらかいです。 「かわいい子……」
おじいさんとおばあさんは、その子をかぐや姫と名づけて育てます。姫はみるみる大きくなり、とても美しくなります。都から、おおきな人たちが結婚の話を持ってきます。でもかぐや姫は、むずかしいお願いをして、だれも条件をみたせません。
夜になると、姫はよく月を見ます。目が少し悲しいです。 「つきがきれい……」
ある夜、月の使いがやってきます。光の中で、かぐや姫は言います。 「わたしは月の都の者です。じぶんの国へ帰らなければなりません。」
おじいさんとおばあさんは泣きます。姫も泣きます。でも空は待ってくれません。かぐや姫は手紙と、ふしぎな薬のようなものを残し、光の中へ上がっていきます。
そのあと、家の中はとても静かです。たけの山は前と同じです。でも、光るたけはもうありません。おじいさんは夜ごとに月を見上げます。おばあさんは空いた座布団を見てため息をします。
風がたけやぶを揺らします。むらでは「かぐや姫」の名がしばらく語られます。それから日々はまた、たけを切り、ご飯を炊く日々に戻ります。でも満月の夜だけは、二人の老人が縁側に出て、同じ方向を見ます。空に、ひとつの光。それだけです。声はありません。ただ、やさしかった日々の残り香のような、静けさがあります。
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たいようがゆっくりしずみます。みちにはあしおと、ドアのおと、いぬのこえ。だれもはしりません。むらはふつうのりずむです。
しばらくしずかです。とおくでだれかがなまえをよびます。くるまいしのみちをとおりすぎます。パンとぬれたつちのにおいがします。
「だいじょうぶ?」となりのひとがまどからききます。 「だいじょうぶ。」したのひとがこたえます。「ただ、ながい一日だった。」
いえのなかのあかりはちいさくて、きいろいです。いすとテーブルと、みずのつぼがあります。だれかがみずをそそぎます。だれかがすわります。だれかがドアをいちびょうみて、まただれかがくるのをまつみたいです。
そらはくらくなります。さいしょのほしがでます。かぜがえだをゆらします。ねこがにわをゆっくりあるきます。よるもいそぎません。
ねるまえに、きょうのことをちいさいこえでもういちどはなします。みち、こわさ、わらい、いえへのかえり。ながいはなしはいりません。いえにいて、テーブルがととのっていて、まどがしまっている。それでたります。あしたむらはまためをさます。このはなしは、あかりのそばできいたむかしばなしのように、こころにのこります。
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